下請法改正、令和8年1月施行へ
価格転嫁と公正取引の実現を目指す
2025/9/26更新
下請代金支払遅延等防止法および下請中小企業振興法の改正法が成立し、令和8年1月1日に施行される。
改正の背景には、労務費や原材料費、エネルギーコストの急激な上昇を、中小企業が十分に価格転嫁できない状況が続いてきたことがある。政府は今回の改正を通じて、発注者と受注者が対等な立場で協議を行い、サプライチェーン全体で公正な価格決定を行える環境を整備する狙いだ。
改正の柱は大きく三点。第一に、協議を経ずに一方的に代金を決める行為を禁止し、必要な説明や情報提供を義務づけることで、価格据え置き的な慣行を是正する。第二に、手形払いが全面的に禁止され、現金化が困難な支払手段も認められなくなる。これにより中小企業の資金繰りリスクが大幅に軽減される見通しだ。第三に、製造や販売に不可欠な運送の委託が新たに規制対象に加わり、物流コスト増への対応が制度面からも支えられる。
また、従業員数の基準が見直され、300人規模(役務委託は100人)までの事業者が保護対象となるなど、適用範囲も拡大する。さらに、法体系の用語も整理され、「下請事業者」は「中小受託事業者」、「親事業者」は「委託事業者」と改められ、法律名も変更される。こうした一連の改正は、構造的な価格転嫁を定着させ、中小企業が持続的に成長できる環境を築くための重要な一歩と位置づけられている。