人手不足倒産、過去最多を更新
建設・物流業を中心に深刻化
2025/4/30更新
帝国データバンクはこのほど「人手不足倒産の動向調査(2024 年度)」の結果を公表した。2024年度における人手不足を要因とする倒産件数は350件にのぼり、2年連続で過去最多を更新した。この調査は、負債1,000万円以上かつ法的整理による倒産を対象としており、2013年の集計開始以来、最多の水準を記録している。
業種別では、建設業が最も多く111件に達し、初めて100件の大台を超えた。次点は物流業の42件で、前年度からやや減少したものの、高い水準に変わりはない。いずれの業界も「2024年問題」とされる時間外労働の上限規制の影響を強く受けており、慢性的な人材不足に直面している。
最近では、大企業による新卒初任給の引き上げや、政府が掲げる最低賃金1,500円の目標により、賃上げの流れが加速している。待遇改善を求めて転職に踏み切る労働者も増加しており、十分な賃上げ余力を持たない小規模事業者において、いわゆる「賃上げ難型」の倒産が引き続き高水準で推移する可能性が高い。また、賃上げの原資をどう捻出するかも、大きな課題だ。価格転嫁の実現がその鍵を握るが、実態としては困難を伴うケースが少なくない。たとえば、全業種平均の価格転嫁率は40.6%にとどまり、建設業では39.6%、物流業では32.6%とさらに低い数値にとどまった。「モノの値上がり」であれば取引先の理解が得られやすいものの、「賃上げ目的」となると納得を得にくいとの声も現場からは聞こえてくる。