価格交渉を拒めない時代へ
下請法・振興法が大幅改正
2025/6/20更新
「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」が成立した。本改正は、サプライチェーン全体で適正な価格転嫁を定着させ、中小企業が持続的に賃上げを実現できる環境を整備するために行われたもの。
本改正では、価格決定の際に協議を行わず一方的に決定する行為を新たに禁止対象とした。これにより、中小受託事業者が正当な価格転嫁を主張できる法的基盤が整備される。また、手形払いや一部の電子記録債権等、実質的に代金回収が遅れる支払手段が禁止され、現金受領の早期化が図られる。さらに、発荷主から運送事業者への物品運送委託も新たに規制対象に追加され、物流分野における不公正な取引慣行にも対応する。
加えて、従来は資本金を基準としていた適用範囲に、従業員数による基準も導入され、実態として規模が大きいにも関わらず規制を免れていた企業にも網がかけられるようになった。執行体制の強化としては、公正取引委員会や中小企業庁に加えて、各事業所管省庁の主務大臣にも指導・助言権限が付与され、報復措置の申告先にも追加されることで、中小企業の申告環境が整備された。
また、用語の見直しにより、「下請」や「親事業者」といった上下関係を示す語が、「中小受託事業者」「委託事業者」へと変更され、取引の対等性を意識した法体系となった。これらの改正は、令和8年1月1日に全面施行され、一部の規定は公布日から施行される。